この綿毛はどこから来たのか。読者はあわてて前のページを読み返す。そして、学校に戻る前、フォスが草むらの中で眠っていたこと、仲間に起こされて、髪に綿毛をつけていたことに気づく。さらには、先生に会う前に、水鏡に自身の姿を映して、髪についていた草の葉を落とし、「ばっちり!」「かわいい!」「りりしい!」と納得していたことにも気づく。つまり、このコマは、先生の前で隙なく身だしなみを整えたつもりのフォスが、髪についた綿毛に気づかぬまま、先生にそのうかつさ、粗忽さを見透かされていたことを示す1コマであり、「何物をも通さない堅牢無比の不器用の地層」という先生によるフォス評を表す1コマなのだ。