川村伸秀「詳伝 小杉放菴」を読んだ。前半の生い立ち部分はあまり興味が湧かなかったが、国木田独歩との関わりあたりから徐々に面白くなり欧州遊学以降はなるほどと思いながら。関係者の経歴まで丁寧に追って記されているので、動きが立体的に浮かび上がる。今まであまり注意したことがないが、東近美に作品があるはずなので、今度行ったら気を付けてさがそう
サーキット2+体幹+ラン30分(262Kcal、3.95Km)。読み物はNYTimesからWith a New ‘Montag,’ Stockhausen’s ‘Licht’ Cycle Nears Completion in Paris シュトックハウゼンの連作オペラ「光」から「月曜日」が11/29にパリで上演される。この曲だけで5時間、全7作を演奏するとリングの2倍かかるという超巨大作の全曲演奏プロジェクトを2018年からマキシム・パスカルが進めており、その一環。来年でコンプリートし、シュトックハウゼン生誕100年の2028年には1週間かけて全曲演奏する予定。パスカルはこの曲は20世紀には早すぎて、21世紀の耳のために書かれたものだという
静嘉堂「重文・国宝・未来の国宝」展に行ってきた。博覧会出品ものは何か雑多な感じだったが、修復を終えて公開という岳翁蔵丘の山水などはなかなかのもの。そして“未来の国宝”をうたう式部輝忠や「四季山水図屏風」同じく伝周文の四季山水はじっくり眺めた。現在の国宝である伝馬遠「風雨山水図」もあるが黒ずんでしまって味わいにくい。曜変天目は何度お目にかかっても惚れ惚れする
三井記念美術館「円山応挙―革新者から巨匠へ」に行ってきた。平日なのにずいぶん混んでいて最初の方の眼鏡絵など人の間から覗くという感じだったが、早めに通り過ぎて後半はややゆったり。「華洛四季遊戯図巻」のような庶民の姿も描くわけね。金刀比羅宮の「遊虎図襖」「竹林七賢図襖」はさすが見応えあり。そして何と言っても若冲「竹鶏図屏風」と応挙「梅鯉図屏風」が並ぶ姿は圧巻。これは見惚れるね
目黒区美術館「コレクション展」に行ってきた。「新収蔵品を中心に」セクションでは多和圭三の鉄を叩いた棒や紙に描いた絵、寺崎百合子の深い鉛筆画、村上友晴のいっけん単色塗りつぶし実は細かな変化という《無題》群。そして「清原啓子の銅版画」セクションでは試し刷りを繰り返す過程も含めて37点(試刷バリエーションも数えると47点)が揃い《後日譚》など幻想的な作品が並ぶ。コンパクトな会場ながらけっこう密度濃く充実していた
TOP「遠い窓へ 日本の新進作家 vol. 22」に行ってきた。寺田健人、甫木元空はあまり個性を感じられず、スクリプカリウ落合安奈のスライドは投影機が邪魔で見にくくテーマも捉えにくい。岡ともみ〈サカサゴト〉シリーズは12の古時計を逆回転させつつ振り子の部分の幻影的な映像が異界に誘う。呉夏枝の《Seabird Habitatscape#2》は南洋諸島で撮影された写真を複数の布に織りこみさらに壁に地図を投影して全体で多重な歴史を見せる。さらにB1Fの「ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」は映画監督によるほとんど動きのない映像インスタレーション群で、スクリーンとその後ろの壁に二重に投影される像が不思議。あまり得意なタイプではない
サーキット2+体幹+ラン30分(276Kcal、4.02Km)。読み物はNYTimesからHildegard of Bingen’s Extraordinary Life, on Operatic Scale 修道女であり作曲家、哲学者、自然科学者でもあった中世の才女は現代の文学、美術、音楽で取り上げられてきたが、オペラの主題にもなった。LAで初演されたサラ・カークランド・スナイダーの「ヒルデガルト」は、彼女の生涯ではなく、幻視とその視覚化にからむ女性との恋という設定を用意し、美しく効果的な音楽で綴る
ヴァージニア・ウルフ「自分ひとりの部屋」を読んだ。ほぼ100年前の女性の視点で男優位の社会における女性の地位、その中で文学作品を創作するということについての講演をもとに物語風に記す。いかに女性が不利かということだけでなく最後にはそれを打ち破る新しい書き手も登場させ批判的に希望も託す。おっしゃる通りという話だが、延々と語るよりもっと圧縮してくれてもと思うのは時代の違いか
東現美「笹本晃 ラボラトリー」に行ってきた。《鋼の屈曲試験/引張試験》《ドー・ナッツ・ダイアグラム》《誤りハッピーアワー》などの映像はどれも奇抜な発想の運動で見入ってしまう。最後に破壊という共通点があるのも面白い(ドー・ナッツは2年前に森美術館でも見た)。《ストレンジ・アトラクターズ》は数学的なスケッチやらいろいろぶら下げたインスタレーションの複合で後者2映像も連動してるのか。《スピリッツの3乗》はシードル醸造所の建築遺産を利用し工業用ダクトをうねらせたダイナミックな一部屋。《測深線》はルアーが弾け、《流し台で社会の縮図》は貝殻なドッが動き回る。とても面白かった。コレクション展3回目は淺井裕介《素足の大地》に再会できて嬉しい
山口尚「現代日本哲学史」を読んだ。哲学を考える活動そのものとして思想や批評と区別したうえで、1970年代以降の日本において取り組まれてきた哲学を、デカルト(思考による枠組み破壊)、カント(反省的な理論構築)、マルクス(歴史との対決)という糸の閃きという切り口から取り上げ、それらの糸が順に重心を移してきた流れはすでに繰り返されており、それを乗り越えるために内側から打ち破る決意を示す。敢えて味わいなどとは距離をおくシステマティックな整理で読みやすく主張も明快で、元気が出る